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H27度予算と行革 ~2つの審議から見える基金問題~

2014年11月07日

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本日、財務省 財政制度審議会において平成27年度予算に関す議論が行われた。写真は、審議後に、麻生財務大臣と撮ったものだ。

財務省の財政制度審議会の議論に参加して7年目になる。他方で、昨年より行政改革推進会議の議論にも参加している。前者が予算配分の入り口を議論する場であるとすれば、後者の行革議論は予算執行後の出口の議論をする場である。一見、異なる議論をしているようだが、本来、両者は表裏一体の関係にあり、二つを並べてみるからこそ見えてくる課題もある。そのひとつが基金の問題である。

1. 基金とは何か
 国家予算における基金とは、国から地方自治体、独立行政法人、公益法人に交付された補助金で、予算年度を越えて複数年度にわたり執行することのできる公的資金をさす。基金は、単年度制の限界を補い、予算の硬直化を防ぐという意味で重要な役割を果たしてきたが、その分、管理が難しく、積み残しも散見されてきた。

 私は、民主党政権時代に補正予算で充当された「地域社会雇用創造事業」基金(70億円)について、学生とともにその執行状況を調べたが、補助金を受けたNPOから再委託、再々委託がなされており、その末端まで調べてゆくと、事業成果どころか、そもそも事業目的が理解されているのか怪しいところもあった。また、再委託、再々委託先の団体の理事に同一人物の名前が記載されているなど利益相反を彷彿とさせる案件もみられた。一旦、国から基金として拠出された場合、最初の委託先までは把握できるものの、再委託、再々委託先については国は管理していないが、その行方を川下の末端まで追うことはかなり困難であるのが実情だ。

2. 基金の規模と課題
 では、どのくらいの規模の資金が基金に投じられているのか。平成20年から25年の6年間で拠出された基金総額は6兆552億円である。先の地域社会雇用創造事業のように個別案件の問題には着目していたものの、ここまで巨額の国費が投じられていることは、今年の議論で初めて知った。
 さらに、特徴的な課題が2つある。
 第1に、返納額が大きいことである。同時期6年間の返納額は1兆478億円だ。つまり、これだけの金額が、補助金として配分されたものの、使われずに、国に返納されているのだ。返納された基金と拠出された基金の年度にずれがあるので、単純に先の6兆552億円と1兆478億円を比較することはできない。だが、基金の相当部分が使われずに返納されていることは確かだ。

 第2は、基金の根拠となる計画立案の立てつけが甘いという点である。基金は補正予算で作られることが多い。平成20年から25年の6年間の基金についてみると、補正予算で作られたものが、当初予算のそれの5.36倍となっている。年度によっては15倍、23倍というものもあった。
 補正予算は、当初予算に比較し、短時間で計画が策定されることから、計画としての立て付けが甘いものが多いが、補正予算で作られた基金も例外ではないだろう。

 つまり、基金の問題は、予算の執行プロセスや成果の問題のみならず、計画立案や予算配分の問題に依拠するところが大きいのだ。

3. 問題の本質は事後評価だけでは解決しない
 そのように考えると、基金問題を、行政改革推進本部下で実施される行政事業レビューのみでは解決することは困難である。 行政事業レビューは予算執行状況や成果の有無を確認する、いわば、事後評価の一手法である。しかし、先に挙げた基金の問題は、計画立案や予算配分という事前段階の問題であり、事後評価だけでは容易に解決できないのだ。
 したがって、基金の問題に取り組むためには、行革推進本部下で実施される行政事業レビューに加え、計画の査定と予算配分のあり方をチェックしなければならないので、それを担っている財務省との連携が不可欠だ。
 
 麻生財務大臣がこの問題をどう理解し、財務当局に指示を出されるのか。増税議論を進めるためにも基金の無駄を整理することは重要だ。願わくば、写真のように笑顔で、厳しく突っ込んでいただきたい。
 

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