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なぜ各党マニフェストからNPOが消えてしまったのか

2012年12月02日

12月4日は衆議院選挙公示、16日選挙に向けて、党首討論が各種メディアで行われている。毎日新聞の山田論説委員によると昭和20年以来の政党乱立ぶりだそうだ。まさに、有権者には判断のための参考資料が必要となっている。言論NPOでは、2001年の小泉内閣以来、政権発足後100日評価、政権の実績評価、そして選挙時のマニフェスト評価を政策別に手掛けてきた。
 私は、NPO政策を中心に評価を担当してきが、今年からは視点を広げて「市民社会」というテーマになった。つまり、国つくりにおける、個人の役割、その参加の受け皿としての非営利組織の役割を政治がどのようにとらえているのかという視点で評価している。
 現在、民主、自民、公明、日本維新の会、社民、みんなの党のマニフェストを評価している(日本未来の党は2日にマニフェストが発表されるのでこれから。)
NPO政策について、大きな変化がみられた。どの政党マニフェストでも、NPOの役割というよりも存在そのものが影をひそめてしまったのだ。民主はビジョンのその中で、「新しい公共」という言葉を用いながらも、重点政策の中にはNPOにかかる公約はない。前回の選挙までNPOの基盤強化が政策に掲げられていたが、その文言はなくなった。
 自民党は、コミュニティ基本法を創設し、自治会やNPOを支援するとあるが、それ以上のことは記されていない。むしろ、父権性の強い国家と保護される国民という構図が透けてみえてくる。維新の会についてはまったく記されていない。市場経済での個人の自立を掲げているものの市民社会という発想を見て取ることができない。

 なぜ、NPOが姿を消してしまったのか。
第1に、民主党の「新しい公共」政策の反動が挙げられる。民主党政権下で、大きな寄付税制改正が行われ、他に公約案が浮かばないということだ。

第2に、「新しい公共」への反動ではあるのが、大量の税金を投じ、法改正を行ったものの、大した効果がなかったのではないか捉えられているという点である。

第3に、NPOに対する期待が薄れたということである。民主党に工藤氏がインタビューした際、なぜNPOがマニフェストから消えたのか尋ねたが、「もう政策を実行しているので」という回答が戻ってきた。しかし、それは方便であって、政策的な優先順位が低くなったということは否めない。

第4に、なぜ期待が薄れたのかという点である。その理由のひとつは、NPOが思ったよりも成果をあげていないと捉えられているということが考えられる。もうひとつは、信頼性が低下しているという点である。11月国会予算委員会で、細野議員が民主党の成果としてNPO政策や寄付税制について言及した際、野党から「へんなNPOが増えている」という野次が飛んでいた。

第5に、政治関係者が、市民社会の変化に気づいていないという点である。市民が主体的に社会課題に取り組む、いわゆる「社会を変える」動きは、先進諸国の若い層を中心に広がり、日本でもその兆しがみえている。こうした動向は政府などの既存の主要システムの機能低下と裏腹に急上昇しているようにみえる。しかし、日本の政治家にはこうした動きが見えていないのではないか。

 1998年のNPO法施行後、NPO支援は主要政党のマニフェストには必ず登場していた。しかし、10年余を経て、NPOの政策的位置づけは急落してしまった。私は、世界の変化、日本の変化に鑑みれば、民間非営利セクターの役割は不可欠であると思う。こうした役割を視野外においた政治に落胆するが、同時に、私たちNPOの急務の課題も明らかになった。つまり、成果と信頼性を上げ、社会に説明することである。やや遅すぎたが、エクセレントなNPOが必要なのだ。

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