ブログ

日韓円卓会議(言論NPO・EAI共催)に参加して

2013年05月12日

 5月11日、日本の言論NPOと韓国シンクタンクである東アジア研究所が共催した「第1回日韓未来対話」(於:プレスセンター)に、言論NPOの理事として参加した。
7日に、両組織が行った日韓共同世論調査結果をもとに、両国間の溝を埋め、前に進むための方向性を探ることをテーマとした会議である。
 討論者は、日本側は、言論NPO代表工藤氏、小倉和夫(元韓国大使)、川口順子(自民党衆議院議員)、伊藤信太郎(自民衆議院議員)伊藤良司(NHK国際部副部長)、箱田哲也(朝日新聞論説委員)を含む10名が、韓国側は、イ・スクジョン(東アジア研究院院長)、イ・テシク(元駐米大使)、ソン・ヨル(遠征大学国際学大学院院長教授)、ホン・ジョミン(KBS報道委員・アンカー)、ユン・ジョング(東亜日報政治部次長)を含む10名で、円卓会議形式で議論が進められた。

「世論調査が示唆したもの」
 日韓合同世論調査については、NHKおよび各紙が報道したが、韓国に対してマイナスの印象を持つ日本人は4割なのに対して、日本に対してマイナスの印象を持つ韓国人は8割近くなっていることや、日本人は中国よりも韓国を重要だと感じているのに、韓国は日本より中国をより重要と感じているという結果を「片思い」として報じられた。
 あまり報じられていないが、プラスの側面もある。両国とも互いの国が重要だと7割以上が考えており、また、韓国人が日本人に対してよい印象を持つ理由の第1として、「親切でまじめ」という日本人の人柄を挙げている(ちなみに、日本人は韓流ブームなどの文化が1位)。
 だが、両国間の溝が広がっているのは明白な事実であり、その明らかな理由は、・歴史認識問題、・領土問題、そして昨今の日本の政治家の言動が刺激している点である。

「日韓円卓会議を聴いて」
 円卓会議は、互いに批判や誹謗中傷をしないことを約束として、進められたが、そのような約束は無用と思わせるほど、真摯で前向きな議論が展開されていた。また、紋切型ではなく、本音に近いところで議論ができているのは、両国の主催団体が、民間非営利組織(NPO)であることによるだろう。
 川口順子議員は、「パラレル型議論(歴史認識問題と並行して、北東アジア経済や安全保障などの議論)が必要である」、小倉和夫元大使は、「未来志向型の議論が必要である」と述べた。しかし、イ・スクジョン(東アジア研究院院長)は、「歴史問題について日本政府から謝罪があったにもかかわらず(村山談話)、今も暴言が続いており、韓国人は納得しない」、箱田哲也(朝日新聞論説委員)は、「韓国にいると、日本は謝罪していないとよく言われた」と述べている。両国の議論は、未来と過去の間で、真逆のベクトルにあるようにもみえた。
 しかし、イ・スクジョン(東アジア研究院院長)が「歴史問題が解決すれば日韓はうまくしているのか、歴史問題を排除しても両国の対立は残る」と述べ、異なるアングルの視点を提供しているようにみえた。

「4つの質問」 
円卓会議は公開で行われ、参加者の質疑応答の機会も作られた。ここで、4つの質問をさせていただいた。
韓国側に対しては以下の2点である。
 ・歴史認識問題を解決しないと、どうしてもほかの議論に進むことはできないのか、
 ・韓・中の間にも歴史認識問題があるにもかかわらず、なぜ交流が急速に活発化しているのか。
日本側に対して(特に政治家に対して)は以下の2点である。
 ・閣僚を中心とした昨今の言動(靖国参拝など)については一般の国民もその理由がわからないところがあるが、説明してほしい、
 ・義務教育の歴史の授業では、近代史の教育が手薄になっていないか。

 両国討論者からは、必ずしも明快なものではなかったが、次のような回答があった。韓国側からは、歴史認識問題が解決しなければ、他の議論に進むことができないというわけではない。だが、それを視野外におかず、韓国国民の気持ちを理解してほしいという趣旨であった。また、中国との間の歴史認識問題は、古代史に由来するもので、日本との間の問題とは性質が異なる。経済交流はこれとは別に発展させることができた、というものであった。
 日本側の回答は、・靖国参拝は亡くなった人を弔うという個人としての行為である、・近代史教育は改善が必要である、との回答であった。前者の回答については、必ずしも満足のゆくものではないという印象は、私のみならず、他の参加者も抱いていた。

「どのようなことがあっても対話を断絶してはいけない」
 会議の締めくくりで、小倉和夫氏が「コミュニケーションをとり、外交遮断するのは反省すべきだ」と述べていた。どのようなことがあっても、対話を遮断してはいけないという点については、会議に参加して肌感覚で納得した。だが、政府は「領土問題はない」というスタンスを取り続けている以上、議論の仕方には自ずと制限がかかる。こうした中にあって、輿論形成と連動した民間公共外交(パブリック・ディプロマシー)の重要性はより一層増しているように思った。

ページTOPへ▲