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東大生のパブリック・マインド

2012年08月01日

東大生のパブリック・マインド

市民社会組織・政策論 田中弥生

 

「ボランティアですか?東大生は条件のよいアルバイトに恵まれているので応募しないかもしれませんよ」。1998年に大学生がNPOでボランティアに従事するための奨学金制度を日産自動車が創設し、各大学に協力を求めた際に、東大から戻ってきた反応である。ボランティアといえば草の根の泥臭い活動というイメージがある。東大関係者にとって、そつなく物事をこなす東大生のイメージとボランティアが結びつきにくかったのだろう。しかし、実際には、数多ある都内の大学の中でも東大生の応募が最も多かったのだ。

東大には官僚志望の学生が多いが、その理由のひとつは公益的な仕事に就きたいというパブリック・マインドである。そうしたマインドをもつ学生がボランティア活動に興味を示すことはごく自然なことにみえる。

あれから15年、ボランティア経験のある東大生は圧倒的に増えた。しかし、何よりも興味深いのは活動スタイルの変化だ。以前のボランティアは与えられた仕事をこなすタイプが殆どであった。しかし、最近はこうした指示待ちスタイルでは満足しないようだ。彼らは課題が与えられると、その解決方法を自分でデザインし、主体的に実施することを好む。そのプロセス自体を楽しんでいるようにさえみえる。東日本大震災を契機に東大生が設立した「Youth for 3.11」も好例だ。素人が被災地に行くことは困難と言われる中で、1万人以上の未経験の学生を被災地に効果的に派遣する仕組みを作り専門家たちを驚かせた。

東大生はそのパブリック・マインドを発揮する場やスタイルを私たちが想像する以上に感度よく進化させているのではないだろうか。

(東京大学公共政策大学院ニューズレター投稿エッセイより)

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