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衆議院選挙とドラッカーの日本人への『預言』

2012年12月11日

田中弥生著『ドラッカー 2020年の日本人への「預言」』集英社

本著では、書き出しを、政治に対する人々の意識調査から始めることにした。それは、目的を失い手段に走る知識人の姿を現すものだった。つまり、政権交代することを目的に投票したこと、公約が政治の意思決定に障害になるので白紙委任すべきという意見に同意を示す識者が多いことに警鐘を鳴らす意味があった。交代することは、手段であり、その結果、どのようなビジョンや政策を期待するのかを問わなければならない。公約が意思決定の邪魔になっているのではなく、公約の質が低いから実現できないのである。ならば、公約を改め、国民に説明すればよい。
 公約をマニフェストというカタカナにあえてしたのは、公約は有権者との約束であるということを政治家が、また有権者自身が再認識するためである。鉄のトライアングル、つまり、政治―官僚-業界の三者によって政策が決まり、有権者がないがしろにされていた状態に風穴を開けるためことが、マニフェスト活動の原点である。有権者不在から、有権者を中心軸におくための活動なのだ。

しかし、各党のマニフェストが、前よりも劣化したと思う最大の問題は、人々が国や地域つくりに積極的に関わるというその役割に関する記述が消えてしまったことだ。NPOが消えたのは、この10数年で信用力を失ってしまったこともあるが、根本的な理由は、政治が個人の役割を理解していないことである。そのことの重大さをどう伝えるのか思案している。

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