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評価の前に行うべきこと 

2017年07月01日
  1. 評価への関心の高まり

評価への関心が高まっていますが、同じくらい頻繁に言われるのが「PDCA」です。これは、P=計画、D=実行、C=モニタリングや評価、A=アクションを示すもので、計画を実行し、評価を行い、評価結果から得られた教訓を次の計画に反映することを意味します。また、PDCAを継続的に行うことで、より高いレベルへと前進してゆくことが期待されます。評価は、それを行った時点で終了と言うわけではなく、評価結果をどう生かすのかという点が、より大事になりますから、PDCAは評価の次のステージを指し示すものと言えるでしょう。

そして、事後評価を行ってみると、よく明らかになるのが、Pの部分、すなわち目的や計画が曖昧で、この事業が何を目指していたのかが判然としないことです。一般に評価は、目的と照らして、どこまで進捗したのか、あるいはどこまで目的を達成したのかを調査し、明らかにすることですから、目的が不明瞭だと何を調査したらよいのかも明らかにならないのです。米国の評価専門家が「この世で評価できないものがある。それは目的がないものだ」という名言を残していますが、この問題を端的に表しています。

 

  1. 「エクセレントNPO」自己評価書分析から浮上した問題

では、なぜ、目的や計画が曖昧になってしまうのでしょうか。その疑問にひとつの答えを提示してくれたのが「エクセレントNPO」大賞への応募書類の分析でした。同賞は、毎日新聞と「エクセレントNPO」をめざそう市民会議が共催するもので、「市民性」「課題解決力」「組織力」の3領域、15の基準に基づいて自己評価を行い、それを応募書類として送付して頂いています。2016年度の応募書類を1000余のデータにして分析を行いましたが、課題解決力に問題があることがわかってきました。

「課題解決力」は、課題認識、目的、計画の遂行とリーダーシップ、根拠に基づく成果の説明(評価)、広報など7つの基準から構成されています。これに沿って分析を進めてゆくと次の点が明らかになりました。課題認識の基準では、自らが取りくむ社会課題を記すことが求められているのですが、曖昧模糊としてうまく記せていないケースが少なくなかったのです。そして、それが目的と計画、さらには評価にまで影響を及ぼしていました。考えてみれば、当然のことかもしれません。なぜならば、多くのNPOが目的として目指しているのは、自ら取り組む社会課題の解決です。したがって、課題を明確に把握できなければ、それが解決された状態をうまく描けず、目的や計画も曖昧になってしまうからです。そして、目的や計画が曖昧であれば成果も生まれ難くなります。

 

  1. 評価の前に行うべきこと

前述のように、評価を行っているとPDCAのPの問題が浮上してくることがあるのですが、どうも、ここで明らかになったのは、さらにその奥に問題があるという点でした。つまり、目的と計画を定める以前の、自らが取り組む社会課題を適切に把握しているのかという問題です。

昨年の「エクセレントNPO」大賞表彰式に出席した、ある企業人が「社会のために自らの人生を捧げる人々をみて、非常に感激しました。でも、掲げている社会課題はすごく大きいのに、実際に行っている活動は小さいので、大きな目的との間に距離があるようにみえました」と感想を述べていたことが印象に残りました。先の課題認識に関する問題を適切に言い当てていたからです。

NPOにとって、まず、必要なのは、限られた人員・資金の中で、解決すべき直近の課題を具体的に再定義し、目的や計画と照らし合わせてみることではないでしょうか。その上で、より大きな社会課題に到達するためのロードマップを描いてみることで、自らの位置づけがはっきりするでしょう。

評価を行う前に、まず、自ら取り組む課題と目的と計画をしっかりと見直す必要があるのではないでしょうか。

*日本NPOセンターへの投稿原稿より

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