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長期財政推計発表について考える

2014年05月01日

1. 長期財政推計の発表
4月28日に財務省 財政制度審議会おり「我が国の財政に関する長期推計」として、2060年までの推計が発表された。これまで政府(内閣府)からは、中期財政フレームのみが発表されていたので、画期的なことである。また、この試算は、同審議会の有識者と事務局の共同で自ら行っており、外注していないという点も興味深かった。
 2020年までにプライマリーバランス(PB)黒字化目標を達成しても(私はこれもかなり怪しいと思っているが)、引き続きに収支改善を行わなければ、債務残高は発散するという結果だ。具体的には、2060年度に債務残高のGDP比を100%まで下げようとする場合には、2021年度以降も収支改善を恒常的にGDPの11.94%実施しなければならない。仮にGDPを500兆円とすれば、5兆円強を改善しなければならないという試算だ。
 しかし、これを実現するためには、何らかの前提条件を大きく変えなければならないだろう。たとえば、従属人口指数がこの試算に含まれている。これは労働年齢を15歳から65歳として計算されているが、それを70歳まで引き上げるなどをしなければ5兆円規模の改善は達成できないのではないだろうか。
 
2. 納税者と何を共有すべきか
 確かに、長期財政推計の発表は画期的なことで、日本の将来の危機をよりリアルに示すものだと思う。ただ、それが日常的な経済や社会活動においてどのような影響を意味するのか、具体的なイメージを伴って説明しないと、多くの納税者とは容易に共有されないだろうと思っている。私も財政学については全くの素人であり、丁寧な説明を何度も聞く機会があったことから、ようやく危機意識を持つことができからだ。
 だが、肌感覚でより危機感を抱くのは2020年直後の日本である。前述のように2020年はプライマリーバランス(PB)黒字化目標達成年であるが、国民にとってさらに重要な一大イベントがある。東京オリンピックだ。オリンピックは国民にとって大きな目標となりモチベーションを上げてくれるものだろう。しかし、それが終わった後、国民は何を目標にしたらよいのだろうか。しかも高齢化率はさらに進んでいる現実を前に我に返ることにならないか。また、最近の北京、ロンドンオリンピックをみていると、オリンピック景気の反動とも思えるような経済的な落ち込みもみられる。
 そのように考えると、2020年までとその後3年の財政計画について、現在の試算よりも具体的な要素を前提条件に入れて作成することが喫緊の課題ではないだろうか。

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