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H27年度概算要求 ”特別枠”の懸念

2014年08月31日

平成27年度概算要求の総額が101兆円と発表された。史上初の100兆円超である。中でも、地方創成関連の予算の膨張が顕著だ。

1.概算要求特別枠とは
地方創成関連予算膨張の背景には、直接的な原因と間接的な原因があると考える。
 直接的な原因は”特別枠”だ。これは、概算要求にビルトインされている「新しい日本のための優先課題推進策」という制度で、”特別枠”と呼ばれている。これは、民主党政権時代から導入されたもので、財政の硬直化に一刀を入れるために作られたものだ。つまり、日本の財政の構成は社会保障、公共事業、文教予算などの主たる予算によって占められ容易にその構造が崩れない。こうした中、各府省は概算要求額の3割の範囲で、政府が示す優先課題に基づきさらに要求を行うことができるのだ。

 ただし、予算総額には限界があるので特別枠のための3割分は、他の予算から差し引かれることになる。そうなれば、各府省としては3割削減される分を取り戻そうと特別枠の要求にやっきになることは容易に想像できる。しかしながら、特別枠として提案された
予算案の内容をみると、いわゆる”ネーミング”だけのものが目立つ。例えば、民主党政権時代、鳩山首相の肝煎りで「新しい公共」が特別枠として提示された。すると各府省から出された「新しい公共」予算総額は2400億円に膨張した。従前の内閣府によるNPO予算は数十億円にも満たなかったことと比較してもその膨張ぶりは著しい。政策の内容が抽象的であいまいなほど予算はより膨張する傾向がある。あいまいであるほど、より多様な事業を抱え込むことができるからだ。

 現自民党政権は、『日本再興戦略2014』『骨太方針2014』を踏まえ、地方の創成と人口減少対策を”特別枠”のテーマとして掲げた。いずれの政策も広範なテーマであることから、多様な事業を抱え込む可能性が高い。そして、地方創成を主たる専門としていない府省も、様々な理屈をつけて「地方創成」という名前のついた事業案で予算要求をするだろう。

2.来年の統一地方選挙とバラマキの危険性
 政府は、地方創成を特別枠のテーマに挙げた理由として、増田寛也前総務大臣がトップをつとめる「日本創成会議」が発表した調査報告書(半数の自治体が消滅する)の影響があったと説明している。
 
 しかし、真のところ、来年予定されている統一地方選が最大の理由ではないか。政府が6月に発表した『日本再興戦略』(2014)には、ローカル・アベノミクスの文字が並び、地方創成が強調されている。そこには、公共事業による地方経済活性化からギアチェンジし、地方の創意工夫力をバックアップすることによって生産性向上を実現するとある。
 しかし、それがどこまで党内で理解されているのだろうか。選挙の現場では、容易に従来型のバラマキに転じてしまうのではないだろうか。

 特別枠によって膨張した地方創成関連予算がバラマキに転じないための監視をどうするのか。主計局による査定のみで予防できるとは思えない。会計検査院は予算執行が合法的になされているのかをチェックするが政策の有効性や効果を検証するわけではない。中央から地方の末端に流れる予算の流れを串刺しにして、予算執行の適切性に加え、政策の妥当性を監視する仕組みが必要である。

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