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NPOの神髄とアマルティア・センの”コミットメント”

2014年10月05日

1. 企業出身理事がみた「危なっかしいNPO経営
 非営利組織の経営の真髄とは何だろうか。今更の問いかけではあるが、最近そのことを考えざるを得ない出来事があった。私はいくつかのNPO関連の団体で、そのガバナンスや運営に参加している。こうした組織では、マネジメントのプロとして企業人が参加することが少なくない。そして、財務面やスタッフの運営について適切なコメントをされる。大抵の場合、財政的に不安定で、スタッフの入れ替わりが頻繁であるために、ハラハラして見ていられないという厳しいものである。おっしゃる通りだ。

 だが、彼らの言う通りに、財政的に安定させ、スキル等の能力のあるスタッフを揃えても、うまくゆくとは思えないのだ。
 アマルティア・センは非営利組織の真髄にあるのはコミットメントであると述べている。これは、NPOの使命や目的に共感した上で、その活動に自らがコミットして関わることを示したものだ。これはボランティア精神に近い概念だと思うが、単にボランティア精神を述べただけではなく、そこに行動が伴うことを指摘している点で、言いえて妙だと思う。私は、NPOのスタッフやボランティアに接する時、常にこの点を気にしている。そして、他の理事と私の間で、スタッフやボランティアの評価について、意見が分かれるところでもある。私は、何度か「事務処理能力や語学力などの技術的な能力は確かに必要であるが、コミットメントの有無をみることが大事ではないか」と先の理事たちに意見を述べたことがあるが、残念ながら殆ど理解を得ることができなかった。抽象的で説得力がなかったのだろう。

2. センのコミットメントを体現した出来事
 ある時、理事の方々からNPOの運営の問題点について語り合おうとお誘いを受けた。だが、その日は、NPOの一大イベントの前日で、スタッフやボランティアが徹夜状態で準備をしている時だった。確かに重要な議題だが、このタイミングで参加する気にはどうしてもなれなかったのだ。
 結局、理事たちの懇談会には参加せず、NPOを尋ねることにした。すると、そこには、はっとする光景があった。このNPOの理事ではないが、本イベントの運営に参加している国連や東京五輪の要職をつとめるシニアの方々が、若いスタッフやボランティアに労いの言葉とともに励ましていたのだ。イベントが始まると二人は、朝から会場入りして、ボランティアたちと共にかいがいしく働いていた。
 その様子をみながら、私は「これだな」と思った。先の理事とシニアの二人の行動の差こそ「コミットメントとは何か」を見事に語っているのではないだろうか。

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