参議院選挙を前に、消費税減税の議論が各与野党で盛り上がっている。
「曖昧な目的と対象」
物価高騰への対策として議論されているものだが、いずれも期限付き(もしくは賃上げが物価を上回るまで)となっていることから「緊急」の物価高騰対策と意味合いが強いようだ。また、減税の主たる対象は軽減税率を適用されたもののようだが、一律という案もあり、その範囲をどこまでにするのかも定かではない。
「消費税減税案への疑問」
目的と対象が曖昧な中ではあるが、それでもいくつかの疑問が沸いてくる。
第1に、大規模な税収減を招くことだ。
何を対象に消費税を減税するのかにもよるが、たとえば軽減税率8%を0%にした場合、年間5兆円ほどの減収になると見込まれる。さらに、一律減税となると年間15兆~16兆円の減収になる。仮に5兆円の減収の場合、地方財源は2兆円が失われる。また、そもそも消費税は「税と社会保障の一体改革」政策のもと創られたもので、社会保障関係費の財源となっている。そうなると、医療、介護、雇用などの社会サービスの財源が減ることになる。
第2に、高額所得者の方が低所得者よりもより大きな恩恵を受ける可能性があるという点だ。
軽減税率を0%にした場合、減税額は、低所得者で平均4.0万円、高所得者で8.3万円ほどになるという。最もダメージを受ける人よりも、そうでない人により恩恵が行くことは、物価高騰対策が目指すところではないだろう。
第3に、期限付きというが元に戻せるのか?
今回の消費税減税の議論については、緊急の物価高騰対策ということもあってか、与野党ともに期限付きを念頭に置いている。しかしながら、約束の期限が来た時に本当に元に戻せるのだろうか。
会計検査院は、令和2年度から始まったコロナ感染症対策の検査報告を時系列に並べたマップを作成している。マップのタイトルをあえて「新型コロナ感染症対策・物価高騰対策」としたのは、新型コロナ対策で講じられた補助金、給付金などが、そのまま物価高騰対策として引き継がれ、今なお続いているからである。
第4に、緊急対策なのに、タイムリーに執行できず、間に合わないという点だ。
税制は、「公平・中立・簡素」の原則のもと、慎重に審議される必要がある。そのためには時間も必要となる。また、法案が設立した後の執行にも時間を有する。スーパー、コンビニなどは、税制変更を受けシステム改修をする必要があるがこれにも相当な時間を要する。現に、前回の消費税率改定の際、施行までに1年半の時間を要している。1年後、2年後には物価情勢が大きく変わっているかもしれない。タイムリーな施行が求められるゆえんだ。
ならば、法律や実施に関する要件緩和をすれば良いという意見もあろう。しかし、安易な要件緩和は、不正やミスの温床となりやすい。のみならず、要件緩和でよくあることだが、必要な書類の提出を省略すると、データを取れないので不正にも気づきくなる。これは、会計検査院が行った、新型コロナ感染症対応関連の検査報告(84事項)に共通して見られた問題のひとつだ。
「新型コロナ感染症対策・物価高騰対策の会計検査報告を教訓に」
先に述べたように、物価高騰対策は、新型コロナ感染症対策から引き継がれ、今も実施されている。残念なのは、政府は、新型コロナ感染症の収束のタイミングで、事後検証を行わずに、次の対策を進めたことだ。一旦ピリオドを打って振り返りをした上で、継続を検討すべきだったのではないか。現に、他国は予算額をコロナ前の水準に戻しているが、日本は戻っていない。こうした中で、会計検査院による「新型コロナ感染症・物価対策に関する一連の検査報告は、数少ない教訓の情報源だ。
物価高騰対策として、消費税減税を議論するのであれば、まずはそのニーズの所在、対象を明らかにした上で、コロナ対策の教訓を踏まえた上で、それが効果的かつ効率的な手段であるのかについて冷静に検討して頂きたい。