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多様な働き方が「国のかたち」を変えていく 

2016年01月15日

産経新聞2016年1月15日朝刊 インタビュー記事 12576114_10203918652085719_208275195_n

●多様な働き方が「国のかたち」を変えていく
実は〝隠れ研究会〟と称し知己の学者らと、日本の未来の形はどうあるべきか議論したことがある。その時、一つに決めることはできないという結論に達した。多様な生き方が広がる中、無理ではないかと、政府や誰かが決めることは。
 ただ、2050年の人口構成をみると日本は80歳代が一番多い超少子高齢化社会になる。社会保障費は次世代にツケを先送りしながら維持しているわけで、安倍晋三首相が目指す一億総活躍社会を思い描くのはそう簡単ではない。つまり従来型の形は維持できない。

 言えるのは、働き方は変化せざるを得ないということ。高齢者も働き続けなければ国を支えきれない。若者から仕事の機会を奪わずに高齢者を活用するとなると、働き方の組み合わせを変えていくしかない。1週間のうち3日は企業で働き、2日は公務員として過ごすことがあってもいい。
 その選択肢としてNPOなどの非営利組織で活動するのも歓迎したい。日本では江戸時代、「火消し」というボランティア組織があった。また、日本は当時、世界一の識字率を誇っていたが、そこで重要な役割を果たしていたのが、町人のための寺子屋。しかも師匠の多くはボランティアだった。時代は異なるが、現代も多様で柔軟で、やりがいも感じられる働き方が求められるのではないか。

 働き方が変わってゆけば、社会インフラや教育制度も変わらざるをえなくなる。そのように考えると働き方の変化がこの国を新たにかたちづくる誘因になるのではないかと思う。
 他方、政府は急速な変化に対応することはあまり得意ではない。だからこそ常に改革が求められる。大事なのは、その方向を決めているのは、為政者や識者ではなく、最終的には有権者であるということを再認識することだ。そのために有権者として政策の行方を見届ける必要がある。
 それは、与党の綱領や選挙時の公約が、政策にどう反映されたのか、どう予算措置され、どのように執行され、効果を上げたのかを確認することだ。実際には投票してもその結果が容易に見えてこない。政権与党と行政府が一体となり、政策のプロセスや結果の見える化に取り組む必要がある。(聞き手 比護義則)

 田中弥生(たなか・やよい) 東京都生まれ。国際公共政策博士(大阪大学)、上智大文学部卒。慶応大大学院政策・メディア研究科修了。東大大学院工学系研究科助教授を経て、平成18年から独立行政法人大学評価・学位授与機構、現教授。日本NPO学会会長、政府の行政改革推進会議民間議員、財務省財政制度等審議会委員。恩師は経営学者のピーター・ドラッカー。専門は非営利組織論、評価論。

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