出席者は、母国の中でも急進的な発言をする人々のようだ。北京にある清華大学の郭于華教授は、中国の市民社会は、全身鎖でつながれた状態だと発言し、崔衛平女史は、ミニブログで高速鉄道転覆事件の裏側を暴露している。台湾と中国の研究者が、ごく自然に市民社会について議論し、環境問題について情報交換できないか相談していた。これも、日本の大学主催がなせる業だろう。
また、羨ましくも感心した点がある。
第1に、プレゼンには自らの想いが込められ説得力がある。今回は研究者であり、なおかつ自ら活動している方が参加している。中国の研究者のレベルも大きく向上しており、その発言、文章とも凄いなど思った。
第2に、雇用の流動性。台湾の清華大学の姚人多教授は、民主進歩党の党主席(蔡英文)の特別補佐を務めた経験をもつ。研究者と政治の仕事を両立させていたそうだ。主催者の北大の林教授も、日本の大学で教員を務めた後、6年間、台湾政治の場で仕事をし、また北大に戻ってきた。日本では雇用の自由化政策とともに、自らの職にしがみつなけばならないという硬直化が起こっているようにみえる。中国、台湾、韓国というある意味、日本よりも不自由な体制の中で、自由で勢いのある発想をする東アジアの人々とどう付き合っていったらよいのか改めて考えさせられた。
第3に、人々の当事者意識である。市民運動やNPO活動の勢いに、日本と他3か国の間に大きなギャップがあるようにみえた。それは国民性というよりも、政治・社会情勢や経済的な豊かさの違いに起因するようにみえる。だからといって、日本は他3か国よりも民主化が少し進み、経済的な安定も少しあるのだから、この状態で良しとするのか。 この10年の納税者と行政、政治と有権者の関係を市民社会の観点から眺めてきたが、今の日本こそ、当事者意識、自分で問題を解決しない限り、何も変わらないという姿勢を学ばねばならないのではないか。