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人間臨終図鑑 ~死ぬための戦略などない~

2014年05月20日

出版社の方から、山本風太郎の『人間臨終図鑑』を紹介していただいた。戦後日本を代表する作家の作品で、900人余りの著名人の臨終の時が1人2頁ほどで描かれている。
出版社の方は、自身の父親にも面白いと渡したところ、既に3回以上読まれているそうだ。ちなみに、その方の父上は90歳近いという。

年齢によって異なるだろうが、自分の死について考えたことのある人は少なくないだろう。「死に方」に関する著作も多く、関心のある人が多い証だ。
先般、増田寛也前総務大臣が提示した、高齢化と人口減少問題に関する提案書は、都市部の独居老人が今後いかに増加するか、このままだといかに悲惨なことになるかについて、警鐘を鳴らしている。それを読めば、孤独死だけは免れたいと思う人もいるだろう。近い将来、超高齢化を迎えた時、死に関する著書はさらに増えるかもしれない。

それでも、私は「死ぬための戦略」などないと思っている。極端な言い方だが、死ぬことを目的にするならば、何ら戦略を打つ必要がない。
私は、終末期医療のホスピスでさえ、病を受け入れながら生きるための場だと思っている。戦略は生きるためのものであり、「生きるための戦略」しかないのだと思う。生きる努力や苦しみから目をそむけた、安易な死生観だけは受け入れがたい。

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