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斎藤明先生の『詩集 教育』

2014年09月23日

 20年ぶりに中学3年生の時の担任の斎藤明先生と生徒15人が集まった。斎藤先生が『詩集 教育』文芸社から出版されたのだ。85歳になられたそうだが、70歳くらいにしかみえない。こうして生徒が集まってくれることが人生で何よりも嬉しいことなのだそうだ。昔からダンディーな先生だったが、チェックのシャツをおしゃれに着こなされていた。

 早速、詩集を購入し読んでみた。たった2頁の詩から、生徒と先生、生徒と親、生徒と生徒の優しくて、すこし物悲しい情景が浮かんでくる。教育の深いものがシンプルな詩のかたちで見事に表現されていた。子犬をひろった生徒が、給食のパンを持ち帰って二人で食べるのを何よりも楽しみにしていたそうだ。それをお父さんが始末してしまった時の生徒の悲しさが描かれていて、読んでいる私も悲しくなってきた。その時の情景や生徒の悲しさがたった2頁の詩から伝わってくる。家庭の事情から進学を選ばず就職を決めた三者面談のこと、生徒がもっているボロボロのかばんのことなど、日常生活の出来事の中から、生徒や親御さんの心の痛みや優しさを伝えている。そして、もそれをみつめる先生の悲しみやくやしさ、そして優しさが滲み出ていて、教師とはこんなに優しくて、素敵な職業だったのかと気づかされる。

 同窓会には、寡黙で、なかなか授業についてゆけず、でも澄んだ優しい目をしたM君も出席していた。聞くところによると卒業後も40年間、先生はM君と交流しているのだそうだ。同窓会がお開きになった時、「M君、帰るぞ。一緒に行こう」と斎藤先生が声をかけた。吉祥寺駅に向かう二人の姿はどこか懐かしくて、優しかった。

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