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新年のご挨拶

2013年01月05日

明けましておめでとうございます。
田中弥生です。

なんとなくすっきりしない気持ちを小脇に抱えて新年を迎えました。原因は昨年末に行われた衆議院選挙にありますが、理由は3つあります。
 第1に、どの政党も日本の社会的課題について未だ答えを出しきれていないことです。
 第2に、各党の政権公約の内容が、供給側の論理に終始し、国民の主体的な役割や取り組みが希薄であったことです。
 第3に、投票率が大幅に下がったことです。

ドラッカーが生きていれば「日本人はなぜ、自ら自由を放棄するのか」と言っただろうと、昨年秋に出版した拙著で記しました。ここでいう自由とは、個人が社会のあり方を選択する自由と責任をもつことを意味しており、氏の自由社会論に基づくものです。したがって、有権者が投票という重要な選択手段を軽視し、個人の主体的役割について政治の認識が希薄になった今の日本社会にこそ、この言葉が必要であると思います。

 それは助言というよりも、警鐘と言ったほうが適切かもしれません。ドラッカーの自由社会論の契機となったナチスドイツに関する分析、さらには、その分析に重要な視点を提供したエドマンド・バークのフランス革命後の衆愚政治に関する分析の中に、現代日本を彷彿とさせる点を見出すことができるからです。

ではどうしたらよいのでしょうか。歴史が教えてくれるのは、特効薬などなく、結局は、自立と公共心、そして知力を備えた個人をどれだけ育むことができるかにかかっているということでした。そして、社会的課題解決に挑むプロセスを通じて、自発的に自己を鍛える場を人々に提供することのできる非営利組織は、こうした個人を育む上で重要な役割を果たすと考えます。

 昨年、2つの異なる非営利組織と交流する好機を頂きました。ひとつは、毎日新聞社、共同通信と共同で開催した「エクセレントNPO大賞」を通じたもので、受賞したNPOや公益法人はこれまで行ってきた活動に加え、提言力を強化したいと述べていたのが印象的でした。
 もうひとつは大学です。数年をかけて開発した評価ツールを通じて大学人と濃密な議論を行いました。そこで「50年後の日本社会に対して、この大学が何をもって貢献できるのかを考えた上で、研究戦略を決めてゆこう」という意見を聞いた時、新たな可能性を見出したような気がしました。

 これらの非営利組織はその分野も性格も全く異なりますが、いずれにも共通しているのは、社会課題の解決に貢献するという志です。私は、こうした志がより多くの人々と共有され、実現に向け自己回転し始めた時、日本人は今より確実にたくましくになると思います。

 誠に微力ではありますが、こうした非営利組織がその役割をより効果的に果たすために、共に歩み、挑むとことに尽力できたらと思っております。今年もよろしくお願いいたします。皆様のご多幸をお祈りします。

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