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第2回「エクセレントNPO大賞」結果と講評

2013年12月06日

「エクセレントNPO」大賞とは、毎日新聞と「エクセレントNPO」をめざそう市民会議の共催による表彰制度です。
 玉石混交状態にあり、社会の信頼を容易に得られない日本のNPOの状況を打開するために7年の月日を費やして研究開発したのが、市民性、課題解決力、組織力の3分野から構成される33の評価基準です。昨年より、この基準を用いた表彰制度を始めましたが、その目的は「自己評価の普及」と「見える化」です。すなわち、この基準をもとに自己評価を行いそれを以って応募書類として提出してもらいます。審査委員もこの基準で審査を行いますが、審査の工程や内容についてすべて公開し、受賞団体にも落選した団体にも同様にコメントをフィードバックします。
 「第2回エクセレントNPO大賞」の結果と講評は次の通りです。

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「第2回エクセレントNPO大賞」結果発表
~「市民賞」「組織力賞」「課題解決力賞」
      「エクセレントNPO大賞」を発表~
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「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」(以下、「市民会議」)は本
日12月6日に「第2回エクセレントNPO大賞」の表彰式を行いました。
まずは、受賞団体およびノミネート団体の結果をお知らせいたします。
昨年の表彰では「エクセレントNPO大賞」は選ばれませんでしたが、今
年は「難民支援協会」(東京都)が受賞しました。市民賞には「プール・
ボランティア」(大阪府)、課題解決力賞には「多文化共生センター東京」
(東京都)、組織力賞には「かものはしプロジェクト」(東京都)と「難民
支援協会」が選ばれました。
今回の応募には、当初の予想を大きく上回り、全国から173もの団体から
応募がありました。この中から市民賞・課題解決力賞・組織力賞の各賞に
おいて5団体がノミネートされ、各賞受賞団体および大賞受賞団体が決定
いたしました。詳細は下記をご覧ください。
なお、本日の表彰式の様子は、明日の毎日新聞の紙面でご紹介されるとと
もに、今後、特集でも報道される予定です。また、言論NPOのホームペ
ージでも表彰式記事と審査委員講評などが順次掲載されます。

■各賞受賞団体
エクセレントNPO大賞
・難民支援協会

市民賞
・プール・ボランティア

課題解決力賞
・多文化共生センター東京

組織力賞
・かものはしプロジェクト
・難民支援協会

■各賞ノミネート団体
市民賞
・多摩草むらの会
・南三陸町復興推進ネットワーク
・子ども劇場千葉県センター
・ゆめ風基金

課題解決力賞
・海をつくる会
・3keys
・放射線医療国際協力推進機構
・POSSE

組織力賞
・NPOカタリバ
・環境市民
・国際ボランティア学生協会

以上が第2回エクセレントNPO大賞の各賞受賞団体および、ノミネー
ト団体となりました。本賞はまた来年も開催いたしますので、是非とも
ご応募いただき、組織改善の1つの機会にしていただければ幸いに存じ
ます。
なお、ご参考までに下記に審査講評や受賞・ノミネート団体の情報など
を記載させて頂いております。お時間ございましたら、是非ともご覧く
ださい。今後ともよろしくお願い申し上げます。

=============下記ご参考==============
審査講評について
■エクセレントNPO大賞講評
 エクセレントNPO大賞は、3つの部門賞受賞者の中から、市民性、
課題解決力、組織力について総合的に優れた団体を表彰するものです。
 審査委員会は、第2回の「大賞」の受賞団体として組織力賞を受賞し
た「難民支援協会」を選び、大賞を授与することを決定しました。
 「難民支援協会」は、組織力に秀でているだけではなく、日本に逃れ
てきた難民の支援という比較的注目されにくい社会的な課題の解決に地
道に取り組んでおり、寄付やボランティアを通した市民参加の機会を作
ることにおいても積極的で堅実な実績を積んでいます。そうした点で総
合的に見て大賞に相応しいと判断しました。

■各部門賞講評
第2回エクセレントNPO大賞については、すべての組織について、情報
開示や資金調達の透明性、市民参加のための努力がなされていることを
確認した上で、「市民賞」「課題解決力賞」「組織力賞」について審査しま
した。各受賞団体の講評は以下の通りです。

≪市民賞講評≫
「市民賞」を受賞したプール・ボランティアは、14年にわたり多様な参
加者を巻き込みながら着実に活動を続けている団体です。1200人の市民
がボランティアとして障害者や高齢者のプールでの運動をサポートして
おり、ボランティアの基盤が大きいです。市民性の自己評価の記述には
ありませんでしたが、課題解決力の記述には、市民ボランティアの気づ
きや喜びの姿、ボランティアの自発的な呼びかけでその輪が広がってい
ることが記されており、参加者の成長の様子を見てとることができまし
た。命に係わる活動だけにボランティアの質の確保が大事になりますが、
その研修の仕組みも行き届いています。自己評価は非常に厳しく控え目
で、確かに特定の狭い範囲の事業であるだけに組織力の弱さはあります
し、また市民性という視点ではさらに広い層からの寄付も今後の課題で
ありますが、全国に普及してほしい草分け的なモデル的事業として高く
評価されました。Webによる広報も分かりよく、財務情報の表示もよく
工夫されています。

≪課題解決力賞講評≫
「課題解決力賞」を受賞した「多文化共生センター東京」は、15歳を過
ぎた外国籍の子供たちの教育の問題、不登校、ドロップアウトなどに着
目しており、問題の認識の仕方が明確かつ適切でした。子供たちの学就
状況や生活状況について実態調査を行い、彼らの問題を体系的に捉えよ
うとしていることがその活動報告や申請書に記された自己評価の内容か
ら伝わってきました。こうした実態調査を踏まえて、自身も外国籍を持
つ若者たちを中心に地道に教育支援活動を展開されてきたことが評価さ
れました。また、現場に密着した活動から、我が国の制度や政策の問題
に気づき、分析を行い提言へと発展させています。例えば、1999年の入
管法の改正によって外国人が増えながら、彼らへの社会保障制度が整っ
ていないことについて分析を行い、政策提言を行っています。
このように、目前に見える外国籍の子供たちが抱える問題を捉えるだけ
でなく、その背景にある問題を捉え、自らの課題認識を深め進化させて
いますが、こうした点が高く評価されました。ただしHP上の情報開示
面では、もう少しわかりやすく工夫する余地があると思われます。

≪組織力賞講評≫
「組織力賞」は、「かものはしプロジェクト」と「難民支援協会」が受賞
しました。
「かものはしプロジェクト」は、強制的に子どもが売られてしまう問題を
防止する活動を、持続的かつ発展的に行い世界の子どもたちが未来への
希望を持って生きられるよう活動しています。資金調達のための事業活
動も展開していますが、会費、寄付金の比率も高く収入基盤が安定して
います。また、10年を超える歴史の中で、その管理体制も整えられてい
ます。「国際性がある点、日本のNPOのモデルとなり得よう」と評価す
る委員もいたほどです。
「難民支援協会」は、1999年の設立以来、日本に逃れてきた難民が自立
した生活を安心して送れるように支援する組織です。法的支援・生活支援・
定住支援の三つの支援活動を柱に地道な活動を続けるなかで、組織基盤
を固めており、収入基盤が分散されています。また、組織の規律や資金
調達のための規律について明確な方針をもっており、この点で日本のNPO
の模範となり得るものと思います。

■全般について
エクセレントNPO大賞は、自己評価を応募条件にするというユニークな
方法をとっています。したがって、すべての応募団体が自己評価をして
いますが、その内容から自己評価に関する傾向や課題も明らかになりま
した。第1回に比較し、全て満点として申請された応募団体は少なくな
りましたが、満点を記された団体がありました。また、評点の理由に関
する説明が不十分なものが多く見られました。すなわち、評点の理由を
根拠となるデータや情報をもって説明することが求められます。しかし
実際には十分な説明がなされているものは少なかったのです。さらにい
えば、自己評価のプロセスで、組織や事業の課題を発見してもらうこと
も「市民会議」が期待していた点でした。
また、自ら取り組む課題については明確に記している組織は多いのです
が、組織の成果や目標の記述になると希薄になるケースは少なくありま
せんでした。また、組織が掲げる使命に対して、なぜ、現行の活動を実
施しているのか、その関係が曖昧なもの、あるいは多くの活動を抱えて
いるために焦点が曖昧になっているものも見られました。自らが目指す
成果や目標を明確に設定し説明する力を獲得することは、より戦略的な
計画を作り、社会への説得力を身に付けることにつながることから、今
後取り組むべき重要な課題であることがわかりました。

■受賞・ノミネート団体基本情報
●プール・ボランティア(市民賞受賞)
NPO法人プール・ボランティアは、障がい者が楽しく安全に「水」に
親しむことができるように、プールでの支援活動を行う団体。プールで
のボランティアがほとんどいない現状を捉え、水泳教師、水上安全法・
救急法の指導員、ライフセーバーなどの「水」の専門家が集まり団体を
設立する。ボランティアが一対一で水泳の指導などを行う。
【代表者:岡崎寛、設立:1999年、大阪府大阪市】
HP: http://www.pool-npo.or.jp/

●南三陸町復興推進ネットワーク(市民賞ノミネート)
一般社団法人南三陸町復興推進ネットワークは、残余財産の帰属を南三
陸町とする、復興プロジェクトを運営・サポートする団体。震災直後か
ら現地で活動してきた南三陸町出身の若手によって設立される。「若手世
代のコミュニティ再生への貢献」「教育を通じた“まちづくり”への貢献」
「新規事業の研究・開発」に関する事業を行う。
【代表者:及川博道、設立:2012年、宮城県本吉郡】
HP: http://www.373net.org/

●ゆめ風基金(市民賞ノミネート)
NPO法人ゆめ風基金は、地震などによる自然災害における被災障害者
支援を行う団体。1995年に起きた阪神・淡路大震災を機に発足した。全
国の障害者運動と永六輔さん、小室等さんをはじめ各界の方々が呼びかけ
人として参加し、自然災害の被災障害者への救援・支援を続けている。
【代表者:牧口一二、設立:1995年、大阪府大阪市】
HP: http://yumekaze.in.coocan.jp/

●多摩草むらの会(市民賞ノミネート)
NPO法人多摩草むらの会は、福祉の枠を超え社会へ向けて、心の病を
持つ精神障がい者が安心して自立した生活できるよう支援事業を行って
いる団体。デイケアに通う精神障がい者の親の会として設立される。就
労支援、自立生活支援、相談支援など、様々な形で支援事業を展開して
いる。
【代表者:風間美代子、設立:1997年、東京都多摩市】
HP: http://kusamura.org/

●子ども劇場千葉県センター(市民賞ノミネート)
NPO法人子ども劇場千葉県センターは、千葉県内の子どもの発達権を
保障する生活文化環境づくりする団体。県内の子ども劇場、おやこ劇場
が集まり協議組織を立ち上げ設立。舞台芸術・文化・体験活動の普及推進
事業、子どもの居場所・社会参画事業、親・家庭を支える子育て支援事業
などに取り組んでいる。  
【代表者:宇野京子、設立:1988年、千葉県千葉市】
HP: http://chiba.gekijou.org/

●多文化共生センター東京(課題解決力賞受賞)
認定NPO法人多文化共生センター東京は、国籍、言語、文化の違いをお
互いに尊重する多文化共生社会を目指している。特に、教育実態調査、
多言語高校進学ガイダンス、「たぶんかフリースクール」の実施・運営な
ど日本語・教科・高校進学支援を通じて、外国にルーツを持つ子どもた
ちを正規の学校へつなげる活動に力を注いでいる。         
【代表者:王慧槿、設立:2006年、東京都荒川区】
HP:http://tabunka.or.jp/

●海をつくる会(課題解決力賞ノミネート)
海をつくる会は、水環境改善活動(主に海、湖)を推進し、横浜の海が
ポイ捨てゴミなどで汚れている現状を踏まえ、「身近な海を大切にしたい」
という思いからスクーバダイビングを趣味とする有志で設立される。海
底・湖底・海浜の清掃や海草「アマモ」場造成、東北震災後の支援活動に
取り組んでいる。
【代表者:伊東徹雄、設立:1981年、神奈川県横浜市】
HP: http://umikai.sakura.ne.jp/

●放射線医療国際協力推進機構(課題解決力賞ノミネート)
認定NPO法人放射線医療国際協力推進機構は、放射線医療者の教育養
成や研究・技術協力を支援し、アジア地域の放射線医療の発展に取り組
む団体。国際機関の活動が援助を求める人々の要望を満たせていない現
状を踏まえ、設立される。新古放射線治療器機の開発途上国への供与、
放射線治療に関する技術書の供与などの活動に取り組む。
【代表者:中野隆史、設立:2006年、群馬県前橋市】
HP: http://www.joicrm.com

●POSSE(課題解決力賞ノミネート)
NPO法人POSSEは労働相談、労働法教育、調査活動、政策研究・提言、
文化企画を若者自身の手で行う団体。格差問題に問題意識をもった都内
の大学生・若手社会人によって結成。相談対応にとどまらず、実態の告
発や問題背景の調査研究に取り組み、雑誌『POSSE』を通して発信して
いる。
【 代表者:今野晴貴、設立:2006年、東京都世田谷区】
HP: http://www.npoposse.jp/

●3keys(課題解決力賞ノミネート)
NPO法人3keysは、全ての子どもが環境によらず十分な教育や支援が受
けられる社会を目指している。家庭等による自助や公的支援による公助
だけではなく、より多くの大人が子どもたちを支えられるように地域社
会に代わる共助再生をめざし、社会資源を子どもたちとつなげ、教育格
差の解消に取り組む。研修、講演、執筆等も行う。
【 代表者:森山誉恵、設立:2011年、東京都新宿区】
HP: http://3keys.jp/

●難民支援協会(組織力賞受賞、ENPO大賞受賞)
認定NPO法人難民支援協会は、日本に逃れてきた難民が自立した生活を
安心して送れるよう支援する団体。難民のニーズに総合的に「窓口」とし
て対応できる団体がなかったことから設立される。日本で生活している難
民への法的・生活支援、コミュニティへの活動や政策提言、調査・研究活
動、広報活動に取り組んでいる。
【代表者:中村義幸、設立:1999年、東京都新宿区】
HP: http://www.refugee.or.jp/

●かものはしプロジェクト(組織力賞受賞)
NPO法人かものはしプロジェクトは、「子どもが売られる問題」をなく
し、世界の子どもたちが未来への希望を持って生きていける社会を目指
す団体。カンボジア、インドで活動を行い、警察支援、コミュニティファ
クトリー支援、孤児院支援などに取り組んでいる。
【代表者:村田早耶香、設立:2002年、東京都渋谷区】
HP: http://www.kamonohashi-project.net/

●国際ボランティア学生協会(組織力賞ノミネート)
NPO法人国際ボランティア学生協会は、学生の熱意、行動力をもって社
会を元気にしていこうとする団体。前身は、国士舘大学で行った「夢企画」
をきっかけに、社会の課題解決に取り組みたい学生が集まり設立される。
「国際協力」「環境保護」「地域活性化」「災害救援」の4つの分野を軸に
活動に取り組んでいる。
【代表者:下村誠、設立:1993年、東京都世田谷区】
HP: http://www.ivusa.com/

●NPOカタリバ(組織力賞ノミネート)
NPO法人NPOカタリバは、「生き抜く力を、子ども・若者へ」を理念に
活動している教育NPO団体。教育の「機会」や「環境」による格差を解
消できるのかという疑問をきっかけに設立。高校生へのキャリア学習プロ
グラム「カタリ場」と被災地の放課後学校「コラボ・スクール」などの
事業に取り組んでいる。
【代表者:今村久美、設立:2001年、東京都杉並区】
HP: http://www.katariba.net/

●環境市民(組織力賞ノミネート)
持続可能で豊かな社会・生活を地域から実現することをビジョンに活動
に取り組む。日本で初めてグリーンコンシューマー活動を具現化し、グ
リーン購入法制定への契機をつくった。自治体の環境施策を応援する
「環境首都コンテスト」を2001年から10年間実施し、2012年に先進的
な自治体やNPO、専門家と連携した環境首都創造ネットワークを創設した。   
【代表者:杦本育生、設立:1992年、京都市中京区】
HP: http://www.kankyoshimin.org/

■今後の取り組みについて
「市民会議」では、受賞団体やノミネート団体、そして他のNPOや非営
利組織、企業、自治体関係者と、「エクセレントNPO」について広く議論
の場を作るべく、フォーラムを開催する予定です。また、応募して頂い
た組織のデータや自己評価書から、評価基準や説明に関する課題も明ら
かになりました。これらの点を踏まえ、今後、評価基準や説明の見直し
や開発を行っていきます。
さらに今後、「エクセレントNPO」を目指す宣言団体や運動への賛同者、
サポーターの募集などを行い、強い市民社会の形成に向けた動きを強め
ていく予定です。

■「エクセレントNPO」とは
1998年のNPO法制定以来、NPO法人の設立数はいまや4.8万団体を
超えましたが、数は増えたものの、その大多数は経営的に力が乏しく、
社会の自発的な課題解決に取り組む以前に、市民とのつながりが弱く、
市民社会を大きく変える力にはまだなっていません。また、不祥事の
数が増え、非営利セクターの信頼性を損ねかねません。
「市民会議」では、こうした非営利組織の組織力としての脆弱性や市民
とのつながりが希薄である点に当初から問題意識を持ち、その質の競争
をもたらし、強く豊かな市民社会への良循環をつくり出すために、非営
利の世界での社会変革のモデルとなるNPOの要因分析を続けてきまし
た。そして、三年間にわたる作業の末、2010年には望ましい非営利組織
像としての「エクセレントNPO」の概念を打ち出し、「市民性」「社会
変革性」「組織安定性」の三つを基本条件とする、組織評価の体系として
の「エクセレントNPO」の評価基準を公開し、その普及活動に取り組ん
できました。
年間大賞の表彰はそうした「エクセレントNPO」を目標にして非営利組
織が競い合い、その動きが市民に「見える化」されることで、市民社会
に大きな変化を起こすことを目指しています。

■「エクセレントNPO」をめざそう市民会議について
「非営利セクターに質の競争をもたらし、強く豊かな市民社会づくりへ
の良循環を作る」ことをミッションとしています。より具体的には、エク
セレントNPOの概念を明示し、エクセレントNPOの必要性について問
題提起し、そしてその認識を日本社会に広げることを活動目標としてい
ます。共同代表には、小倉和夫氏、島田京子氏を迎え、国内外で活躍す
る数多くのNPO/NGOの代表、研究者約10名をメンバーとしています。

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